会社方針を明らかにする
ドラッグストアの店長がいわゆる自爆営業、自分で商品を購入して目標達成していました。これに気付いた会社が調査のうえ店長を懲戒解雇、店長は懲戒解雇は無効だとして会社を訴えた例です。
自爆営業とは言っても売上コンクール対象の栄養ドリンクを9回にわたり47,869円分購入したのみです。なお、店長は購入時のポイント4,021円の消滅処理をせず、個人でポイントを貯めていました。とは言え、コンクールの結果、店舗が報奨金を受けたことはなく、会社が受けた事業上の支障は明らかとは言えません。店長は勤続20年、懲戒歴はありませんでした。これらの点に注目しますと、懲戒解雇は重きに失したとして無効だと裁判所に言われてしまいそうです。
一方で、このドラッグストアでは店長会議で、ポイント詐取した社員を退職させたことを周知したうえで、次の方針を店長たちに伝えていました。「商品・ポイントは現金と同じです。商品、金銭(ポイント)に関わる不正をする者は小売業で働く資格はありません」「会社は、商品、金銭(ポイント)に関する不正は絶対に許しません。金額の多寡に関わらず、警察に被害届を提出し、会社として懲戒解雇等の厳格な処分をします。」
これは、社長の価値観・信念がにじみ出た方針だと時枝は感じました。だからこそ裁判官も懲戒解雇について「社会通念上、相当とはいえない(厳し過ぎる)」とよくある判断をせず「懲戒解雇を選択したことが相当性を欠くとまではいえない」と会社決定を支持したのだと思います。
社長の価値観、会社の方針を常日頃から社員に伝えておくことの大切さを感じた裁判例です。

