「パワハラしない」で部下が潰れる?

 部課長の皆様は、パワハラという語にうんざりしていませんでしょうか。テレビでもウェブサイトでも上司の発言が叩かれる話がごろごろ。会社でも管理職研修でパワハラすると懲戒だと聞かされる。もちろん、職場で若い部下と話すときは細心の注意を払う。すると、しまいには「最近は、なんでもハラスメントと言われてしまう。だから僕は、もう部下とは積極的にかかわらないと決めたんです。そうすれば、ハラスメントになりようがないでしょう?」となるのも無理はありません。

 ところが、上司がこのような放任的な部下対応をする職場では、そうでない上司と比べて、半年以内に部下がメンタル不調になる確率が2.63倍に、そして半年以内に新たなパワハラが発生する確率が4.28倍だったという調査結果があります(津野香奈美『パワハラ上司を科学する』)。地方公務員約1,000人を対象にした大掛かりな調査から判明しました。

 部下に注意しない、なるべく話さないことで、どうしてメンタル不調や新たなパワハラを招くのか。放任型の上司の態度は部下に「自分は嫌われているのでは?」「辞めさせようとしているのでは?」という不安を与え、疑心暗鬼を生むとともに、上司の適切な指示がないため職場が不安定になり、声の大きい従業員が弱い従業員に強く当たっても上司がブレーキをかけないからと説明します。

 確かに、指摘しても自覚のない強いキャラの部課長は一部います。でも、大半の部課長に無用な萎縮と遠慮を与えていては、成果を生むための基礎となる良好な人間関係ができません。社長様には、自身の会社だけは世の風潮に流されず、部下への正しい注意の仕方を部課長に伝えていただければと存じます。