勤務時間外の窃盗に対する処分は?

 銀行の副支店長が携帯ショップの店頭に「ご自由にお持ちください」と置いてあった洗剤1個を持ち帰りました。販促用の洗剤とはいえ持ち去りは窃盗にあたり、窃盗は就業規則の懲戒事由に当てはまるとして、銀行は副支店長を懲戒解雇しました。これに対して副支店長が懲戒解雇無効を裁判で争いました。

 まず、通行人に持って行ってもらう洗剤を持ち去ることが窃盗にあたるのか?という疑問があります。この銀行も携帯ショップも大型商業施設内に店舗がありました。裁判所は、携帯用ショップは販促用洗剤を営業時間中に配布するつもりで置いていたのだから、営業時間外の持ち去りは「窃盗罪に該当し得る」としました。

 次に、勤務時間外での窃盗に対して会社が懲戒できるのか?という問題があります。裁判所は、顧客の財物を預かる銀行業で副店長が窃盗行為をしたのは「厳しい非難に値する」とし、窃盗が携帯ショップにも商業施設側にも発覚して銀行への信頼が大きく失墜したことを指摘し「懲戒処分を受けることは避けられない」としました。

 最後に懲戒解雇という量刑について「私生活上の窃盗」に対する懲戒解雇は「より緩やかな処分を選択することも充分に可能であった」と懲戒解雇無効の結論を出しました。

 この例から得られる教訓が2つあります。勤務時間外の犯罪行為は、勤務先名が報道されるとか被害者に知られるとか、会社の信頼失墜があって初めて処分できる点です。もう一つ、犯罪行為が勤務時間外に行われた場合、極刑たる懲戒解雇は無理筋ということです。仮に降格処分でしたら争われる可能性が低くなり、争われても会社は負けなかったのではと考えます。