イケア「同一労働同一賃金」「無期雇用転換」という美しき宣戦布告

 イケア・ジャパンの新人事制度について、人事本部長である泉川玲香氏の講演を聴講した。同社は今月より、従業員3,400人の7割近くを占めるパートタイマーを原則、無期雇用化するとともに、同一労働同一賃金の原則に基づく大幅昇給を実施する。会場に集まった人事担当者の関心は、「なぜ、改正労働契約法の影響が生じる平成30年よりも前に、有期従業員を無期転換するのか。」「なぜ、パートタイマーの人件費を大幅に引き上げてまで、同一労働同一賃金を実現しようとするのか。」に集まっていた。泉川氏は、平等Equalityはイケアの価値観のひとつであるから実現したかったと説明していたが、この人事政策を、パート労働法・均等法の観点から賞賛してもあまり意味はない。そうではなく、経営の観点から、他の小売業に対する「美しき宣戦布告」であると理解するべきだろう。同社の日本市場における今後の成長には、多くの良質な従業員を必要とする。一方で、同社のビジネス理念によると、ホームファニシング製品を手頃な価格で提供しなければならない。このため、人事政策としては相場並みの賃金水準を選択しており、従って正社員と比べても遜色ない働きをする良質なパートタイマーの確保に重点を置いていた。と、ここまでは他の小売業と同じ人事政策である。ユニクロも、今年に入ってパート・アルバイトの正社員化を実行、急ピッチで拡大してきた店舗網の足元を固めた。そして、イケアはここで更に野心的な人事制度により、他の小売業者の多くが平成30年の改正労働契約法の影響による無期転換を静かに、そして横並びに待っているのを千載一遇の好機とばかり、良質なパートタイマー人材の先行確保という攻めの一手を打ったと見ることができる。単にパートの時給を1,500円とうたって求人すると、求職者からは「人手不足で相当困っているのか」「仕事がきついのか」等と受け止められかねないが、「わが社の理念は同一労働同一賃金です(∵年収300万円÷年2,000時間労働=時給1,500円)」とうたえば、その理念に共鳴する感性の高い求職者を集めることができる。しかも、一番最初に始めることで、黙っていてもマスコミが報道してくれるから、宣伝効果は抜群だ。イケアがパートタイマー労働市場に発したこの「美しき宣戦布告」に対してどう戦っていくか、小売以外のパートタイマー活用企業も対抗の戦略を練り直さなければなるまい。

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